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果樹作りについて

  果樹作りについて
剪定剪定
果樹と過ごした年月が技術に変わる

 剪定は会社経営に似ているかもしれない。
 まず、心がけるのは樹をコンパクトに仕上げること。葉でつくられる養分の30〜60%も消費する枝だけに、太くなればなるほど果実への栄養が減ってしまう。「利益を上げるために組織をコンパクトに」と書けば、経済誌の誌面にでもなりそうだ。
 樹をコンパクトに仕上げるためには、どの枝を切り、どれを残すかの見極めが重要になる。3年後の枝振りを想像し剪定していく。父はチェーンソーで剪定をする。樹の生命力を信じ大きく枝を落としていくからだ。読みが外れれば、せっかく育てた樹を枯らしてしまいかねない危険な技術である。ただ、そこまでの緊迫感を持って挑む価値があるほど、剪定は果実の出来に大きく影響する。そして剪定技術を支えるのは感覚だ。
 どの枝がどう伸びていくのかが理屈抜きでつかめて初めて、プロとしての剪定ができるようになる。そのためには樹を見続けるしかない。樹とどれだけ真剣に相対してきたのか、その時間の質と量が問われる。

 実を付ける枝は柔らかく生き生きとしていなければならない。そのためには、その小枝を支える枝の角度にも注意を払う必要がある。ここでも最後のよりどころは感覚だ。じつは父の剪定技術をもっと深く理解したくて本もけっこう読んでいる。ただ書物の通りに樹が育つわけもなく、プラスにはなるが完全なマニュアルなど見つからない。
 幹から出る枝から出る枝。つまり「幹から出る枝の子ども」をいつ切るのかも重要な問題である。枝にエネルギーが残っているうちに切り落とし、別の枝にその役目を担わせる必要があるからだ。いわば組織の若返り。目の前にある枝が、どれほどのエネルギーを残しているのか、それは樹と対話して決めるしかない。ときに「若づくり」をする枝もいるからだまされてはいけない。枝の気力・体力・やる気を勘案し、後継者の育ち具合もチェックしながら判断する。論功行賞も懲罰人事もない。結果がすべての厳しいリストラが展開される。問題は樹が寡黙なことだろう。だからこそ耳を澄まして、繊細な樹の声を拾わなければならない。

 枝には必要な葉の枚数があると話すと、農業者以外は驚くことが多い。枝の大きさに合った枚数じゃないと果実に影響が出てしまうのだ。樹の栄養をつくり出す葉が少なすぎるのはもちろん、多すぎるのも問題となる。しかも枝が効率よく育つための配置も考えなければならない。剪定の時期は冬。葉のない時期に行われる。夏の姿を思い描きながら、はさみで小枝を切り落としていく。この作業は「忘れるぐらいがちょうどいい」と言われている。考えすぎると切りすぎて取り返しのつかないことになりかねないからだ。
 剪定はスピードも重要だ。それなりの面積を世話する果樹農家は、どんどん手を動かさないと時間が足りなくなってしまう。考えるのではなく、答えを感じて切り進めていく。まさに職人仕事である。
 樹と向かい合う中で、自分の技術と感覚を信じられるのか問われるときがある。そうした緊張感も剪定の楽しみのひとつだと思う。

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土作り土作り
微生物への「接待」で土を作る

 土作りは面白い。土が良くなると、樹が喜び、果実の味も変わってくる。ただし土壌の変化と樹の変化は、常に一定ではない。土壌の成分を試験管に揃えるだけなら化学的に可能だろう。しかし果樹栽培は土の微生物の力も借りる必要があり、気温や降水量などによっても土は変わっていく。
 伊達水蜜園の土作りは、下草が重要な役目を果たす。「雑草」と農家から忌み嫌われることも多いが、広大な果樹園における土の状態はまず草が教えてくれる。例えば栄養が足りていない土ではスギナが育つ。また下草の根は土に隙間を作るので、通気性や水はけをよくしてくれる。じつは根も呼吸をしている。そのため酸素を取り入れて二酸化炭素を排出できなければ、根は水分や養分を吸い上げることができない。だからこそ土の隙間は重要なのだ。
 さらに下草をタイミングよく刈り込みことで、微生物に分解された栄養を土壌表面に作りあげることができ、栄養を保つ力が増進する。無駄なものなど何もないのである。

 土壌のための栄養である堆肥には、土壌改良効果の高いバーク堆肥を使い、微生物の住処なる炭と一緒にすき込むようにしている。じつは微生物がどれだけ活発に動けるのかに、農業者はとても神経を使っている。わずか1gの土にも1億以上もの微生物がいるといわれる。彼らは土壌の通気性や水はけ・水もちをよくするだけではなく、有機物を窒素や炭素など植物が吸収しやすい形にも変換してくれる。農業者にとって神様のような存在なのだ。
 伊達水蜜園では有機生物の活性化のために木酢液を散布している。土壌の消毒や根の生長促進としても使われることが多いが、木酢液には200種類もの有機成分が含まれており、微生物の栄養としても働いてくれるからだ。微生物は複雑に絡み合って土を改良していくので、とにかく彼らの環境に働きかけるしかない。いわば微生物への「接待攻勢」である。ただ微生物は顔が見えないので、土や樹の状態を確かめながらの働きかけだ。もちろん過剰接待は逆効果。常に適度な距離が求められる難しさがある。

 作物の種類によって、求められる土の質も変わってくる。澄んだ水でしか暮らせない魚もいれば、汚泥のような場所で育つ魚がいるのと同じ。生物の「住環境」は種に合わせなくてはいけない。植物の場合、土のpHと栄養バランスが重要になってくる。伊達水蜜園では、ボカシ肥料を基礎に羊毛粉などの有機性の肥料を与えている。さらにミネラルの補給のため、豆腐を固めるのに使うにがりも散布する。
 肥料をあげるポイントは、1回の散布量を少なくして、植物の成長時期に合わせて必要な分だけ追肥していくことだ。果樹の栽培がうまい人は、樹が使い切るギリギリの量を肥料として与えることができる。ここでも必要になるのは、樹との対話だ。
 追肥の与え過ぎは、人間でいえば肥満や高血圧になる食事と同じ。運動のできない植物にとって、栄養の調整はとても重要。追肥が多すぎた樹は糖度が低くなったり、色が悪くなるなどの影響がでてしまうことがある。樹の健康管理は、農家の最も重要な仕事。「メタボ」の樹にならぬよう細心の注意が必要なのだ。

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